私は天使なんかじゃない







Stranger






  ストレンジャー。
  主に西海岸を中心に暴れ回る最悪最強の傭兵団。





  ここは西海岸。
  ミスティたちが舞台とする東海岸とは異なる地。
  西海岸には総人口80万いるとされている(戸籍制度はあるが流民の数は把握できていないので国家としても推定人口しか把握していない)新カルフォルニア共和国がある。通称NCR。
  かつて西を支配していたエンクレイプはBOSとの戦いに敗れ、東に撤退。
  本来ならば西の覇者はBOSになるはずだったものの血縁至上主義のBOSは人員的に伸び悩み、結果として台頭してきたNCRに敗北した。
  他勢力を併呑し、懐柔し、時には殲滅し、勢力拡大と領土拡大を続けてきたNCRはある地域に目を付ける。
  それはモハビ・ウェイストランド。
  戦前はネバタ州と呼ばれた場所で煌びやかなカジノがあった場所。
  モハビは栄えていた。
  特にニューベガスと呼ばれる都市は人々の限りない欲を吸収して華やかな光を放ち続けている。
  全面核戦争前から、つまり200年以上前から今も生き続けるベガスの謎の支配者Mr.ハウスが核爆弾を迎撃、寄せ付けなかったため、ベガスは戦前の姿を維持していた。
  そこにNCRは侵攻した。
  目的はベガスの街……ではなく、フーバーダムだった。
  勢力を飛躍的に拡大し続けたNCRは慢性的に水不足と電力不足に陥っていたからだ。
  調査の結果、ダムが水力発電としても稼働可能だと知ると直ちに大部隊を派遣、モハビ前哨基地を設営、更にモハビ各地に基地を設置してMr.ハウスを恫喝し、モハビ全域を新たな
  領土にする……はずだった。
  邪魔が入ったのだ。
  同じく勢力を拡大し続けた為、維持する為には戦い続けなければならないシーザー率いるリージョンがコロラド川を越えて進撃。
  NCRとリージョンは泥沼の戦いを開始。
  Mr.ハウスはうまく立ち回り、双方を疲弊させ、双方に支援をチラつかせてキャップを吸い上げ、時に仲介し、確固たる立場を維持していた。
  もっとも、NCRもリージョンも過小評価していたものの、Mr.ハウスが率いるセキュリトロンというロボットの軍団は両軍相手に戦えるだけの戦力だった。
  当初押し気味だったNCRだが戦争の長期化に伴い本国からの物資輸送が困難となり次第に後退。
  NCRはここに至ると長期戦の構えを見せ、陣地を固めながら地元勢力であるグレートカーンを駆逐、グレートカーンは決戦を嫌って山脈に逃亡。モハビ支部のBOSに人海戦術で攻撃して
  拠点であるヘリオス1を奪取。同施設は太陽光発電所も兼ねており、奪取したことによりNCRのエネルギー事情は改善された。
  また、本国から大量の囚人を移送、線路の修復に従事させる。これにより物資の補給が列車により可能となった。
  戦いは一進一退。
  今日は勝ち、明日は負ける。
  それがモハビ・ウェイストランドの日常。



  モハビ前哨基地。
  南に広がる広大な砂漠の向こうにはNCRの本国がある。ここはモハビに北上する為の最前線であり、リージョン側が万が一にもNCR本国に侵攻する際には最後の砦となる、そんな場所。
  現在ここで指揮をしているのはリー・オリバー将軍。
  NCRの指導者キンバル大統領の親友でコネで将軍となった無能……と揶揄されてはいる。
  確かに将軍は野戦は不向きだった。
  短期決戦も。
  ただ、籠城戦、長期戦ではその才能を発揮した。
  結果としてリージョンの勢いは失速し、戦線は硬直状態となっている。
  将軍は地元の弱小勢力を駆逐して陣地を増やし、NCR紙幣をモハビに流通させ戦争以外の手段でモハビを侵食しようとしていた。もっともそれは失敗したが。NCRの紙幣はあくまで紙であり
  NCRが敗退すればただのゴミだが、リージョンが持ち込んだ通貨は全て金と銀である為、通貨でなくても価値がある。将軍は別の手を考えなくてはならなかった。
  オリバー将軍は奥の執務室で今後の作戦を考えている。
  戦争は机上の空論では動かないが、それでも当初は予定通りに進んでいた。
  リージョンの登場や勢いは想定外ではあったがそれでも修正可能範囲内だった。物資も人員も足りていた。
  ディバイドが謎の爆発をするまでは。
  ディバイド、それは戦前の街。
  1人の運び屋が再建した新しいコミュニティ。人々の新たなる生活拠点となり、大きな都市になる可能性を秘めた、希望の街。その運び屋はNCR側に提案した。軍の補給ルートに使うことを
  提案し、その代り通行料としてディバイドに物資の支援をすることをNCRに通達してきた。NCRはそれを了承、新たなルートを確保したことで戦争は有利に進んだ。
  リージョンはその補給路を潰すべく大部隊を派遣するも、動かなかった。
  正確には動けなかった。
  その運び屋はあらゆる勢力にパイプを持っている。下手に手を出せば別勢力からも袋叩きになるからだ。
  だがその硬直状態も長くは続かない。
  ディバイドが爆発したからだ。
  結果として街もNCRもリージョンも吹き飛んだ。
  現在の物資や人員の欠乏はその為だ。リージョン側もこの戦力の低下により戦法を変えざるを得なくなった。長期化の理由はこれだった。
  依然調査は続いているが原因は判明していない。ある報告によれば核爆発ではないかとの報告もあり、NCRは調査のため、そして核爆弾があるのであれば入手するべく調査隊を送るも誰も
  帰ってこない。リージョン側も定期的に兵を送ってはいるが、定期的に送っているのであれば、NCRと同じ状況なのだろうと将軍は見ていた。

  コンコン。

  「入れ」
  「失礼します」
  扉が開き、最敬礼して兵士が入って来る。手には書類の束。
  「報告書であります、閣下」
  「ふむ」
  机の上に置かれた報告書の束をめくる。
  それはストレンジャーに対しての報告書だった。ストレンジャーは主に西海岸を荒らす傭兵団。各地方には支隊がいて本隊が来るときは合流して一緒に暴れ回る。
  規模としては小さいのだが神出鬼没、そしてほぼ全員が異能の使い手であるため、討伐は出来ていない。
  ただ、契約したら裏切らないという性質があるので実際にはNCRも何度も利用していたりする。もちろん依頼を利用して騙し討ちしようと試みたことはあるが全て返り討ちされていた。
  「閣下、ストレンジャー追撃部隊なのですが」
  「どうなった?」
  モハビを去ってキャピタルに移動しようとしていたストレンジャーに対して追撃を将軍は命令していた。
  もちろん結果は既に分かっている。
  報告した者の顔を見ればわかる。
  「全滅か?」
  「はい閣下。150名編成の部隊は全滅であります」
  「数人にか」
  「はい閣下」
  ストレンジャーの大半は先遣隊としてキャピタル入りしていることは知っていた。追撃戦の相手はわずか数名。しかし将軍は驚かなかった。その数名こそが主力なのだから。
  追撃させたのはあくまでも将軍として職務の一環でありポーズだった。
  「新たに追撃部隊を編成しますか?」
  「……」
  「閣下」
  「放っておけ。下がってよし」
  「了解しました」
  部下が退室。
  オリバーは手にした報告書に目を落とした。





  ストレンジャーに関する報告書。

  本隊はボマーという人物が率いる。本隊の数は約30名。
  各地方に支隊がおり、本隊が来る際には合流して依頼に従事する。それ以外の場合、支隊は各々適当に動いている。
  傭兵団としての思想はなし。
  キャップで動く。
  その為、NCR側とリージョン側を泳いでいる。
  以下、人員の名前と概要。
  なお全ての名前はコードネームであり能力にちなんでいる。



  『ボマー』
  本隊所属。ストレンジャーのリーダー。
  ネリス空軍基地を拠点とし近付く者を砲撃するというブーマーと呼ばれる排他的集団出身。
  一見すると頼りがいのある優しげな農夫のような印象があるが性格的には酷薄で好戦的。NCR、リージョン側から賞金が掛けられている(とはいえ利用価値がある為、雇うこともある。
  その為賞金はあくまでポーズ)。NCR紙幣では10万ドル、リージョン通貨ではアウレウス金貨5万枚。
  使用武器は両手にはめた爆殺フィストという手甲。
  火薬が仕込んであり、つまりは紅蓮腕……ゲフンゲフン……それぞれ三発分の爆発が起こせる火薬が仕込んである。つまり計六発。
  接近戦以外ではグレネードランチャー。
  爆発系武器を好む。
  また破壊工作のプロフェッショナルで地雷などの設置も得意としている。
  FEVを取り込んだ能力者。
  能力は以下の通り。

  Demolition Expert……爆発物が飛散した際にその方向性を任意に操作できる。つまり爆発を一定方向に集中できるようになるため威力を倍加させる。
  Light Step……地雷に自身が感知されなくなる。自動発動。



  『バンシー』
  本隊所属。
  出身地不明。
  ボマーに常に従がう白人の女性でストレンジャー発足時からいる不動の3人の1人。
  口から破壊力のある高音波を発することが出来るので後述の2人を実力では圧されるものの、能力では圧倒できる。ボマーに対して絶対的な忠誠を誓っており常に側にいる。
  使用武器はアサルトカービン。
  能力は以下の通り。

  Scream……悲鳴を発して対象を破壊する。強弱は可能。



  『ランサー』
  本隊所属。
  出身はリージョンによって滅ぼされた部族。族長。
  初老に差し掛かった黒人。発足時からいる不動の3人の1人。
  元々はリージョンに最後の最後まで抵抗した部族出身で槍の使い手。瀕死のところをボマーに拾われストレンジャーとなった。傭兵団という特性上、リージョンに雇われることもある
  がその際にはリージョン側の何人かの役職者を分からない範囲で戦死に見せかけて抹殺している。
  ボマーはそれを黙認しており、ランサーはストレンジャー発足時にシーザーを殺せる機会があれば殺すとも明言している。
  リージョンへの復讐に固執する一方、惨めに生き延びている自分に対しての憤りも持つ武人肌の人物。
  使用武器は槍。
  必要とあれば銃も使うが固定武器は槍のみ。
  非能力者。



  『デス』
  本隊所属。
  出身地不明。
  実質的な能力はボマーを遥かに超える、黒衣の男。発足時からいる不動の3人の1人。
  ボマー、バンシー、ランサー3人がかりでも勝てないとされる実質西海岸最強の人物。ボマーに従う理由は傭兵団として動けばそれだけ人を狩る機会が増えるからであり忠誠は皆無。
  自らを死神と定義し死を撒き散らすことを至上とする危険人物。
  戦闘一辺倒かと思いきや情報収集能力にも長けている。
  武器は双剣。
  拳に仕込んだ収納もできるナイフ。
  能力者。
  能力は以下の通り。
  
  Silent Running……無音の移動術。足音がしない。自動発動。
  Grim Reaper's Sprint……殺した相手の体力を奪う。常に一刀の元に屠れば集団相手でも息切れすることなく無双できる。自動発動。



  『ガンナー』
  本隊所属。
  元NCR軍所属のヒスパニック系の女性。
  リージョン側の侵攻により突出した部隊にいたが全滅、ボマーに拾われてストレンジャー入りする。自分を見捨てて逃げたNCRに対して敵疑心を持っている。
  好戦的な性格ではあるがボマーに対しては比較的従順。
  同じ境遇のランサーとは親しく、ランサー同様に依頼側であってもリージョン、NCRの数名を事故死させてもいいという許可をボマーから得ている。
  使用武器は2丁のライトマシンガン。
  その火力により攻撃はもちろん防衛にも重宝される。
  能力者。
  能力は以下の通り。

  Strong Back……自分の腕力以上の物が持てる。重量のあるライトマシンガンを2丁持てるのもその為。ただし実質的な腕力が上がるわけではない。自動発動。



  『マシーナリー』
  本隊所属。
  出身地は中国。戦後すぐにグール化して生きている元中国軍の機械工。
  ボマーに従う理由は戦前からの敵であるアメリカ人を殺せるからでありストレンジャーに対しての感情は持ち合わせていない。
  組織内では主に銃火器の修理、ロボットの整備等の元々の機械工としてのスキルを発揮している。
  使用武器は中国製アサルトライフル。
  非能力者。



  『オートマタ』
  本隊所属。
  アメリカ軍が開発した警戒ロボ。
  マシーナリーが整備、改修した機体。人工知能は搭載されていないがマシーナリーが遠隔操作し、組むことが多い。
  搭載武器は右手のミニガン、左手のミサイル。



  『トーチャー』
  本隊所属。
  元々はNCRの溶接工。一般人。犯罪を犯したため逮捕、その後モハビに強制労働者として従事させられていた。脱走してストレンジャー入り。
  溶接メットを被り火炎放射器で各地を荒らし回っている。
  本隊では新参者である為パシリが多い。
  使用武器は自分でカスタマイズした火炎放射器。
  非能力者。



  『レディキラー』
  本隊所属。
  ベガスの街で荒稼ぎしていたギャンブラー。あまりに稼ぎ過ぎた為、追放された美しい容姿の持ち主の白人男性。
  Mr.ハウスに不満を持ちストレンジャー入りした。
  使用武器は9oピストル。
  主に情報収集要員として活動している。
  能力者ではないが特に女性に対しての話術に長けている。
  非能力者。



  『マチェット』
  本隊所属。
  現在は先遣隊のリーダーとしてキャピタル・ウェイストランド入りしている。
  一時期リージョン側に任務としていた為、リージョンの装いをしている。
  不動の3人よりも後の入隊ではあるが古参メンバーで、その為ボマーから今回の先遣隊リーダーとして送り出された。
  使用武器はマチェット。
  非能力者。



  『ドラッグクイーン』
  本隊所属。
  現在は先遣隊としてキャピタル・ウェイストランド入りしている。
  モハビ出身のジャンキー。
  様々な薬品と薬に精通しており情報収集と攪乱を任務としている。
  薬に精通している為ドラッグクイーンと呼ばれているが、その一方で女装している男娼という意味合いでのドラッグクイーンでもある。一見すると女性だが実際には男性。
  非能力者。



  『ガンスリンガー』
  本隊所属。
  現在は先遣隊のメンバーとしてキャピタル・ウェイストランド入りしている。
  元々はフリーサイドを拠点とするザ・キングスというギャング団のメンバーだが自身をナンバーワンと定義した結果、追放された。
  拳銃の名手。
  使用武器は2丁の9oピストル。
  能力者。
  能力は以下の通り。

  Gunslingr……どう撃てばどう当たるかの射線が見えるので命中率が上がる。ただしミスティのように自分に対しての弾道は見えないし時間もスローにならない。自動発動。



  『マッドガッサー』
  本隊所属。
  現在は先遣隊のメンバーとしてキャピタル・ウェイストランド入りしている。
  出身地不明。
  顔にガスマスク、全身をライダースーツで身を固め、ガスボンベを背負っている。
  使用武器はガス。
  基本的に思想はなくキャップと各地の混乱が目的。
  非能力者。



  『フライマスター』
  本隊所属。
  現在は先遣隊第2陣のリーダー。ただし第1陣と合流時には指揮権はマチェットに委譲される。
  部隊は合流したが現在フライマスターは消息不明。
  ブロードフライという拳ぐらいのミュータントハエを意思1つで操ることが出来る。
  操る対象が違えど同じ能力を持つローチキングとは犬猿の仲。
  能力者。
  能力は以下の通り。

  Master……半径500メートル内のブロードフライを操ることができる。任意発動。また、操ってなくても自身はブロードフライに襲われないという能力は自動発動。



  『ローチキング』
  キャピタル支隊に属している。
  キャピタル・ウェイストランドの荒野に陣取り、支配しているラッドローチを使って追剥ぎをしている。そのテリトリーは他の支隊メンバーと違って公然に知られておりキャラバン隊や旅人は
  そのテリトリーに入らないようにしている。レギュレーターにも目を付けられているが現在の手薄な状態からレギュレーターは手を出せないでいる。
  本隊のフライマスターとは折り合いが悪い。
  フラッフィー、ジッターズという名のラッドローチ二匹をお気に入りとして常に体に張り付けているローチブリーダー。
  能力者。
  能力は以下の通り。

  Master……半径一キロ内のラッドローチを操ることが出来る。任意発動。また、操っていなくても自身はラッドローチに襲われることはない。



  『ザントマン』
  キャピタル支隊に属する。
  ウェイストランド人の小男で特徴がないのが特徴。印象に残りにくい顔なのか、密偵として各地に出没している。
  基本的な戦闘能力は皆無だが寝込みを襲うという暗殺に長けている。
  たちの悪いロリコン。
  非能力者。



  『ハイウェイマン』
  キャピタル支隊に属する。
  元カンタベリー・コモンズの住人で修理工をしていた。
  ただ修理の腕も大したものではなく、戦闘能力も大したものではなく、ぎりぎりコードネームを与えられているにすぎず補充メンバーと大差ない実力。
  使用武器は常に手にしているレンチ。
  銃の腕も悪く大概は使いっぱしりとして使われている。
  非能力者。



  『ドリフター』
  キャピタル支隊に属する。
  元オアシスの住人でツリーマインダーの1人。
  ハロルドの存在を絶対化し、オアシスの存在を秘密にすることに固執し続けキャラバン隊を狩り続けた(完全な自給自足は無理な為、取引は必要不可欠だった)為に追放された。
  追放された後もオアシスの存在を知る者を狙い続けている。
  キャピタルを転々としており最後にいた廃墟の教会にはおらず今回の招集にはまだ参加していない。
  使用武器はスナイパーライフル。
  非能力者。



  『ミンチ』
  キャピタル支隊に属する。
  ボルト87で作られたスーパーミュータント。
  ボマーに対して従順で彼をマスターとして従がうものの他者には絶対に命令を受けない。現在はユニオンテンプルのかつての拠点である廃墟を拠点にしているが今回の
  招集を公然と無視していて参加していない。
  知性は並みのスーパーミュータントよりは高いが片言。
  使用武器はスレッジハンマー。
  


  『他のメンバーたち』
  コードネームが与えられていない補充メンバー。
  能力的には高いがやはりコードネーム持ちに比べれば弱く、与えられる前に戦死することが多い消耗品の立ち位置。
  現在のメンバーは全員が非能力者。



  『ブリーダー』
  ポイントルックアウト唯一のメンバー。
  モハビにあるという地下闘技場ザ・ソーン出身。
  クリーチャーを飼い慣らすという特殊な仕事をしていた。フライマスターやローチキングと違い能力で操るのではなく特殊な香料でクリーチャーを支配していた。
  ブリーダーの最後等はルックアウト編を参照。
  非能力者。





  バサ。
  乱雑にオリバー将軍は書類をテーブルに捨てた。
  意味はない。
  意味はないのだ。
  連中はキャピタル・ウェイストランドに去って行く。
  もはやモハビには関係ない。
  「潰し合うがいいさ」
  低く呟く。
  顔には若干の笑みが浮かんでいた。
  キャピタル・ウェイストランドの状況はNCRも掴んでいる。エンクレイブ、キャピタルBOSの戦争。さらにエンクレイブは内部分裂している。いずれは三つ巴の全面戦争となるだろう。
  そんな混乱の坩堝にストレンジャーを追加で放り込んだところで問題あるまい。適当に向こうで処理されるだろう。
  潰し合えばいいさともう一度呟いた。
  NCRの現在の最大の目的はリージョンを撃退すること。
  リージョン側は総司令官にジョシュア・グラハムという人物を据えている。このショシュアという男は苛烈であり、それと同時に冷静で常に先頭に立つ人物。何度もNCRは煮え湯を飲ま
  されてきたが、あと一歩というところでリージョンは軍を引く。オリバーは知っていた、シーザーの頭脳に狂いが生じていることに。疑心暗鬼となりジョシュアを何度も呼び返している。
  それを付けば形成を立て直せるだろう。
  逆転は可能だ。
  ストレンジャー?
  知ったことではなかった。
  「精々キャピタルで遊ぶがいいさ」
  かつてデズモンドはミスティに言った。
  世界は繋がっている、戦っているのもあんたたちだけではないと。
  そう。
  戦争はまだ、そこかしこで続いている。
  何も学んでいない。
  本質は変わらないのだ。
  例え世界が核で吹き飛ぼうとも人類は武器を手に取り戦い続ける。
  そして人は過ちを繰り返す。